【山形金網加圧実験詳細 (「かはさき画報 大正3年10月 第2巻 第10号より)】

  ◆目的
  煉瓦積の目地に山形金網を挿入することにより得らる可き利益を調査す。
◆本試験の種類
  梁の抗曲度
◆試験用品
  煉  瓦 (中等赤煉瓦)
モルタル (配合、セメント1、川砂3)
山形金網 (川崎工場製、巾2吋半、18番線4本に22番線3筋を山形に巻きたるもの)
◆梁の抗曲度を試験する標品の種類
  高2呎3吋(十層)巾九吋(一枚)長6呎2吋2分の1、山形金網は2列に入れ其挿入段敷により五号に分つ

1号:各目地毎に挿入即9層

2号:底部より五層丈に挿入
3号:底部より三層丈に挿入
4号:底一層丈に挿入
5号:山形金網を用いざる普通煉瓦積
 
◆試験をなすべき日
  積畳後49日
◆荷重の方法
  径間5呎 中央一点に下圧を加える
 
◆試験の成績表(大正3年8月上旬施行)
試験標品番号
(金網挿入段数)
試験標品の重量
(切断したる甲乙の重量)
破壊時の視圧力
(噸)
歪み 記事
1号(9段入)
143貫500 甲:71貫000
乙:72貫500
7噸03 9000听ノトキ 1/32吋
15000听ノトキ 1/16吋
 
2号(5段入)
141貫200 甲:77貫600
乙:63貫600
6噸25 12000听ノトキ 1/16吋
14000听ノトキ 3/32吋
 
3号(3段入)
139貫900 甲:69貫200
乙:70貫700
4噸68 10000听ノトキ 1/16吋  
4号(1段入)
138貫800 甲:67貫600
乙:71貫200
3噸35 5000听ノトキ 3/64吋
7500听ノトキ 1/16吋
切断急
5号(普通積)
140貫300 甲:71貫800
乙:68貫500
3噸35 4000听ノトキ 1/32吋
7500听ノトキ 1/16吋
切断甚急
 
◆評論
  試験の成績により彎曲抵抗率を計算し、更に破壊抗曲強度を算出するに順次に223.5、199.2、151.3、120.9、121.4にして、第一号は第五号に比し八割四分の増強を示めせり、之れ実に山形金網挿入によりて得られたる効績にしてやがて煉瓦積みの寸法を節約し敷地内利用面積を増大し得ることを暗示するものにして地価騰貴せる都市、並びに用地極限せる工場等における煉瓦建築に際しては必然利用せざるを得ざる新材料なりとす。(後略)
以上